枯死木は社会でどのように受け入れられているのか

きのこ

 

ドイツの森林では枯死木の蓄積を増加させる政策が進められていますが、森林関係者ではない一般の市民の方々にとって、森林内の枯死木の存在はどのようなものでしょうか。

枯死木に関するイメージ

2013年にNABUによりアンケート調査が行われ、その中で「枯死木」という言葉から連想するキーワードを、自由記述形式で回答してもらう質問がありました。

枯れ木に関する調査

その結果、実に56.8%の人が、枯死木が動植物にとっての生息地という回答をしました。多くの人が、枯死木の存在意義を理解しているというような結果です。またネガティブな回答もありませんでした。ドイツでは「枯死木」に関する教育が、どの程度進んでいるのでしょうか?今後、ドイツの枯死木教育についてさらに調査していく必要がありそうです。

また同じアンケート調査で、3つのタイプの森林を写真で提示し、それに対する意識調査が行われました。「トウヒ林」、「公園」、「近自然的な森林」は、それぞれ人間の介入の度合いが異なり、「公園」が1番人工的で、「近自然的な森林」が1番天然に近くなります。

トウヒ林

トウヒ林

公園

公園

近自然的な森林

近自然的な森林

 

 

 

 

 

枯れ木に関する調査

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果は、やはり「公園」が「整然とした」で65.7%と最も多く、「トウヒ林」は「経済的な」で64.0%と最も多く、「近自然的な森林」が「自然な」で75.8%と最も多い結果となりました。そして、「美しい」においても、人の手が多く入った公園よりも、「近自然的な森林」が高い結果となりました。

この調査で使われたトウヒ林の写真について、同じトウヒの一斉林にしても、もう少し林齢が高ければ、ここまで暗い森林ではなく多少結果は違ったかもしれません。いずれにせよ、「近自然的な森林」における倒木などの要素も、特にマイナスな要因とならず好意的な印象を与えていることが分かりました。

また2013年に連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省によって行われたアンケート調査でも、枯死木に関する質問がありました。

枯れ木に関する調査

 

 

 

 

 

 

「枯死木は森林の一部である」、「近自然的な森林における腐った木や落ちそうな枝は人間にとって危険である」、「森林は整然としているべきである」という3つの質問がなされ、「非常にそう思う」から「全くそう思わない」までの選択式で回答を求めました。

結果を見ると、「枯死木は森林の一部である」の質問では76%の人が「非常にそう思う」または「そう思う」と回答しており、森林内における枯死木の存在はおおむね受け入れられていることが分かります。「近自然的な森林における腐った木や落ちそうな枝は人間にとって危険である」という質問では、61%が「非常にそう思う」または「そう思う」と答え、危険性も感じている人が多くいました。「森林は整然としているべきである」という質問に対しては、「非常にそう思う」または「そう思う」と答えた人が33%、逆に64%の人はそこまでの整然さは求めていない結果となりました。

枯れ木に関する調査

 

 

 

 

 

 

 

さらに前述の質問の、「非常にそう思う」の回答のデータを細かく見てきます。

「枯死木は森林の一部である」で「非常にそう思う」と答えた人は、高い教育を受けた人では特に高い割合でした。「近自然的な森林における腐った木や落ちそうな枝は人間にとって危険である」で「非常にそう思う」と答えた人の割合でも、教育の水準によって大きな差が出ました。「森林は整然としているべきである」という質問で、「非常にそう思う」と答えた人の割合は、男性で低く、女性で高い結果が出ました。またその質問においても、教育の水準で結果が異なりました。

これまでの調査結果から総合して推測すると、ドイツでは枯死木の存在や役割はかなり教育や認識がされていて、好意的に受け入れられていると考えられます。

一方、「よく整備された森林」と「粗野な森林」を歩いた後の感情の違いを調査し、「よく整備された森林」は「粗野な森林」と比較して、精神により好影響を与えたという研究結果もあります。

人は森林における枯死木の存在の重要性を認識し、原生的な森林は必要だとしながらも、自分が散歩などに利用する森林などは、よく整備された公園のような森林を求めるものかもしれません。

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