ドイツにおける森林戦略2020(教育・広報・研究)

研究

 

2011年に策定されたドイツの森林戦略2020。今回は教育・広報・研究に関する項目を見てみます。

教育・広報・研究

現況

ドイツには、持続可能な林業の複雑な課題や要求に対応するフォレスター(森林官)を高い水準で養成するために、4つの総合大学と5つの専門大学が存在する。実務的な専門作業員やマイスターは、学校と現場におけるデュアルシステムによって、包括的な教育がなされる。また特別な業務に関しては、一部追加の教育が必要とされる。

大学や国や州の他の研究機関では、森林、環境、社会の関係性が研究され、具体的な問題に対する解決策が模索されている。州の森林行政とその森林経営体は、特に助言と経済的利用の引き受けについて、私有林の所有者と協同組合を支援している。

連邦食糧・農業省は管轄研究機関の枠内において、ハンブルクとエバースヴァルデの森林・木材産業の研究に、年間およそ800万ユーロの援助している。ギュストローにある再生可能資源専門エージェンシー(FNR)は、2010年に素材的な木材利用に330万ユーロを助成した。

現在、ほとんどのドイツ人は都市部に住んでおり、農村地域との関係性や、持続可能な土地や自然の利用の必要性、関係性についての知識が失われてきている。これは特に森林、森林自然保護、林業への理解、それらが社会へもたらす能力について当てはまる。

また実際に、森林内または森林関係において、自身で働いている人間が減少していっている。それゆえ、森林の利用や持続可能な林業の能力の意味、必要性、方法についての知識がさらに低下している。

将来的な課題

森林に課された社会的に重要な様々な要求を、可能な限り満たすための最も重要な前提条件のひとつは、持続可能な林業の幅広い人達への受け入れである。持続可能性の観点における森林利用の媒介と、雇用、価値創造、自然保護、気候保護に関する社会的、国民経済的な森林と林業の意味は強く強調されなければならない。

特に小規模の森林所有者の森林に対する距離の増加は、狙いを定めた助言、情報提供によって対処しなくてはならない。州の森林行政の構造変化は、一部、小規模私有林所有者への助言能力が制限されることにつながる。これは特に、必要不可欠な木材の伐採から販売、そして地域の環境教育へ悪影響を及ぼす。

政治のための決定根拠の改善は、継続的な課題のままである。特に森林の環境モニター(樹冠の調査、連邦森林在庫調査、森林気候ステーション、土壌の調査、継続観察地)において、付属研究の高い需要がある。そのため、気候変動の森林への影響及び森林利用と生物多様性との関係性の知識を改善し、存在する空白を埋めて行かなければならない。

ドイツの大学

 

解決の糸口

・持続可能な発展の森林に関する教育は、森林からというだけでなく、彼らの生活の基礎となっているものから距離が遠くなっている人々の増加を抑えるのに最も適している。それゆえ、それはとても重要である。持続可能性の原則に則った、責任のある、長期的な目標に沿った資源の利用方法は、林業というものによってはっきりと説明される。森林行政と団体は、森林の環境教育と消費者啓蒙でさらに協力する。教育と情報の提供は、全ての森林所有形態の包括の下、可能な限り完全な状態でインターネットプラットフォームにて公表されなければならない。

・連邦食糧・農業省は、森林の持続可能性の教育と、消費者啓蒙のための審議会の設置を検討する。これによって、全ての森林所有形態の関係の下、持続可能な発展の教育コンセプトに沿った森林教育事業が補助、促進される。

・政府は管轄研究の森林分野において、以下の研究項目を強化する。

-気候変動の森林への影響と、森林と木の気候保護能力の増加の手がかり

-気候変動が、森林エコシステムの生物多様性へ及ぼす影響

-森林環境モニタリングと、森林内の生物多様性のモニタリング

-経済林の生物多様性の保持と持続可能な利用及び森林の生物多様性と経済的機能、生態学的機能の関係性の明確化のための効果的なアプローチの発展

-将来的な木材需要、森林外のバイオマス栽培を含めた持続可能な供給量確保の可能性についての持続的な学術評価

-特に木材のカスケード利用による、革新的な木材製品と効果的な生産方法

・国と州の管轄研究により、重要な研究は調整・実行される。このネットワークはさらに拡大され、他のヨーロッパ組織とERA-Netsによって共同で計画を進められる。EUの第7回、第8回研究枠組みプログラムにおける研究可能性は、大いに利用されなくてはならない。

・小規模の私有林所有者の教育及び重要な研究計画や発展計画による知識の実践への移行は、さらに拡大されなくてはならない。

・林業の多機能性を保持するためには、資格を持った専門員が必要である。彼らは経済的、技術的、自然科学的な基礎を教育され、森林の公共の福祉の多様性を考慮した持続可能な利用方法に精通し、研究や実践の発展における、最新の知識を駆使することができなければならない。

・国連は、2011年を国際森林年と定めた。連邦食糧・農業省はこの枠組みを、森林の総合的な情報啓蒙キャンペーンに利用する。政府は250万ユーロの予算をもって、“森林文化遺産”のキャンペーンを行い、その枠組みの中で、森林のための全ての団体組織と森林の機能多様性を広告し、彼らの活動をネットワーク化し公開される。さらに、森林訪問の際の責任意識と、さらなる森林への理解の促進に適した情報メディア(„Waldfibel“)が作成される。

 

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