ドイツの南西部に位置するラインラント=プファルツ州でも、30年近くにわたり近自然林業を行っています。トウヒが多かった森林は、現在はブナやナラが主要樹種となっています。
ラインラント=プファルツ州の近自然林業
ラインラント=プファルツ州の国有林では、次のような方針での近自然林業を行っています。
・場所に適した樹種選択
・皆伐の禁止
・生態系に則した野生動物管理:希少な種は促進し、増加し過ぎた種は、樹木が天然更新可能な程度まで減少させる
・直径や価値が、個々の成熟に達した時期での樹木の利用
・植林よりも天然更新の優先
・無規則な森林土壌上の走行の禁止
・価値の高い林縁の保護
・化学薬品の使用の禁止
・老齢木や枯死木などの森林特有の生息地と、希少な動植物の保護と発展
・自然の発展の参照地としての森林保護地区網(Naturwaldreservat)の、科学的な支援
枯死木の保護
生物多様性の維持に関して重要な枯死木の保護については、2011年に定められた「ハビタット木・老齢木・枯死木の取扱コンセプト」に詳しく書かれています。 コンセプトの内容は、バーデン=ヴュルテンベルク州の「古木・枯死木コンセプト」と似たようなものになっています。「ハビタット木・老齢木・枯死木の取扱コンセプト」では動植物などの生息地となるハビタット木を、4つの方法で保護しています。
・森林保護地域
・保護区
・ハビタット木グループ
・個別のハビタット木
規模の大きいものから紹介していきます。
・森林保護地域
森林保護地域は、例えば国立公園やユネスコエコパークの核心地域や、森林保護地区(Naturwaldreservat)などで定められている地域です。
・保護区
保護区は営林署により定められた、動植物とビオトープを守るための一定の面積を持つ区画です。保護区では森林の利用が基本的に除外され、自然の発展のまま放置されます。保護区の数や大きさや合計面積などは、このコンセプトでは定められていません。
保護区に適した場所としては、以下のような場所が挙げられます。
・貴重なハビタットの存在する場所
・過去から継続的に森林であった場所
・多くの枯死木が発生し、その他の木の経済的利用が、多大な安全確保作業に対して割に合わない場所
・現状で多くのハビタット木が存在している場所
・ハビタット木グループ
基本的にハビタット木グループの設定は成熟段階の林分で行い、胸高直径が40cm以上の木を選びます。1つのグループは15本程度の木で設定し、およそ3haに1つ配置することが勧められています。ハビタット木グループは核となる1本~複数本の老木、立ち枯れ木を選び、その周辺をその他の木で囲います。
それらは自然の発展に任せ、枯れて分解するまで放置し、その後は通常の経済的利用を行います。その際、再び他のハビタット木グループを設定します。交通安全には注意し、林道や作業道からは最低でも木1本分以上離して設定します。
・個別のハビタット木
労働安全の観点から、危険地域を集中させるためにハビタット木グループを個別のハビタット木より優先します。個別のハビタット木が設定されるのは、その木が特に自然保護の意味において高い価値がある場合です。
※ハビタット木の定義
このコンセプトで対象となるハビタット木は特に、ビオトープ機能を満たす生きている木、死んでいる木、または木の一部です。
このコンセプトのハビタット木は下記の特徴を、ひとつまたは複数持ち合わせています。
・穴が開いた木:キツツキや枝の腐りにより穴が開いた木
・枯死木:大部分の樹冠が枯れている木、胸高直径が40cm以上の立ち枯れ木
・老齢木:非常に樹齢の高い木で、目標直径を越え、価値の低下が起こり始めている木
・点在的にのみ存在する希少な在来樹種
・特別な特徴がある木:例えば、根付近の大きな傷、根腐れ、洞、キノコの発生、雷の被害、折れた枝、多くのコケやツタに覆われいる木、特徴的な樹形
・樹皮が剥落している木
また、次に挙げるような木は義務的にハビタット木となります。
・大きな洞が開いた木
・営巣木
・EUのFFH指針に載っている希少種の繁殖・生息地
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