ドイツにおける森林戦略2020(気候変動)

緑の地球

 

2011年に策定されたドイツの森林戦略2020。今回は気候変動に関する項目を見てみます。

気候保護と気候適応

現況

森林は、太陽光、水、空気中の二酸化炭素を利用して自然素材である木を生産している。木の50%は炭素からできている。この炭素は木の成長の際に、空気中の二酸化炭素を取り入れたものである。1kgの木には、空気中の2kgの二酸化炭素が利用されている。そして、木の中の炭素は長い間結合される。地球上の森林は、地上圏の炭素の50%を貯蔵し、森林はいわば、自然の巨大な炭素貯蔵庫なのである。

ドイツ以外の世界では、熱帯地方を中心に違法伐採や焼畑により、年間1,300万ha以上の森林が破壊されている。その後の植林は十分ではなく、FAO(国際連合食糧農業機関)によると、今もなお年間520万haの森林が地球上から消滅している。世界の二酸化炭素排出の原因の20%は、国際的な森林破壊のためである。

国際的な森林保護や、持続可能な森林の導入や促進、適合した対策なくして世界的な温暖化防止目標は達成できない。

 

将来的な課題

森林と持続可能な林業は、気候に対しポジティブな作用を及ぼすことが証明されている一方、気候変動の影響、特に乾期の増加と嵐や暴風雨のような異常気象にさらされている。

基本的に、個々の異常気象が森林の安定性に与える影響は局地的だが、長期的な気候変動は、森林にとって大きな危険をはらんでいる。水資源枯渇、病害虫被害、森林火災は大規模な森林破壊を引き起こしかねない。気候変動の影響は、植物の長い生長期間などの良い面もあるが、主に悪影響の方が目立つ。なぜなら、特に早春の長期的な乾燥は、森林の活力を何年にも渡り奪うからである。

森林がドイツの国土の大きな面積を占めているということや、森林の活動・生産サイクルが長期であるという特性ゆえ、政府が2008年の12月に行った気候変動措置のような、持続可能な適切な対応を早急に行う必要がある。そのためには、造林における樹種選択の決定の手助けとなるような、地域のさらなる気候変動予測が重要である。なぜなら、現在存在している予測は、大きな不確性を含んでいるからである。

さらに、気候と病害虫の不確かな相互関係は、造林的な適応措置の決定を困難にする。困難さという意味では、例えばトウヒである。トウヒはドイツで最も多い樹木で、経済的にも最も重要である。

トウヒは早く育つので、沢山の地域、また本来生育に適さない地域にも植えられた。しかしトウヒは、増加する病害虫や暴風雨による倒木など、気候変動の間接的な影響を受けやすい。

それゆえ多くの地域では、変わりゆく気候条件下でのトウヒの植林はリスクがある。将来的に、このことはさらに多くの地域で当てはまる。

葉

 

欧州委員会はGreen Paperにおいて、長期的に見て、持続可能な森林利用は森林の二酸化炭素貯蔵能力を維持または増加させ、持続的な木材、木材製品、薪の生産は気候変動に大いに役立つと定めている。

ドイツの森林では、約12億トンの炭素量が地上や地下のバイオマスに結びついている。この貯蔵量については、森林の気候への影響にも関係している。木の成長量が利用量より大きければ、森林の蓄積量は増加し、森林は二酸化炭素削減に役立つ。成長量以上に木を使用すれば、蓄積量を低下させ、森林は二酸化炭素の発生源となる。炭素の収支は林齢構成にかかっている。若い森林は二酸化炭素をさらに下げる効果がある一方、古い森林は長期的に、二酸化炭素の吸収と排出が平衡状態になる。

ここ数十年間でドイツは、戦時中や戦後に急激に伐採された森林を、高い蓄積を持つ森林へとつくりあげた。現在その蓄積量は330m3/haとなり、ヨーロッパで1番蓄積量の多い森林となった。しかし、ドイツの森林の大部分は高齢化し、成長量が鈍化してきている。それゆえ森林蓄積量増加による、さらなる炭素固定のための能力が減少してきている。

90年代始めには、年間8,000万二酸化炭素トンの削減能力があったがそれは次第に下がっていき、今日ではそれが年間2,000万二酸化炭素トンになっている。しかし、その他にドイツではおよそ1億1800万二酸化炭素トンが長期的に木材製品として貯えられている。また化石燃料の替わりに、木を素材やエネルギーとして利用することにより、年間8,000万トンの二酸化炭素放出を削減している。

木のカスケード利用、いわゆる素材利用の後にエネルギー利用をする利用方法は、気候保護に多大な貢献をしている。木材製品のポジティブな影響はしかし、国際的な気候条約に顧みられていない。京都議定書の後のプログラムでは、この点を詰める必要がある。

 

解決の糸口

  • 森林は二酸化炭素削減のために保持されなければいけない。ドイツの森林を気候変動へ適応するための措置と、森林と木の二酸化炭素削減可能性の開発は、ドイツ政府の気候目標とエネルギー目標によって支援される。
  • 持続可能な林業から生産された、他の素材の代替品としての木の使用は、ライフサイクルアセスメントに留意し、適切な措置で促進されなければならない。
  • 政府は、EUや国際的な気候交渉の場で、木と木材製品の利用を国内の二酸化炭素収支に加算できるよう努力する。
  • 気候変動が森林へ及ぼす影響、そしてそれに対する適切な措置の研究は総合的に強化されなければならない。
  • 現在ある手つかずの森林の、気候変動に対する適応能力を研究し、その知見を林業へ活かさなければならない。

 

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