ドイツ林業でブナが広がっている理由

ブナ林

 

ドイツの森といえば、黒い森のような針葉樹林をイメージするでしょうか?本来のドイツの森は、明るいブナの森です。過去に針葉樹の拡大のために縮小したブナ林が、再度広がってきました。

森の母と呼ばれるブナ

ブナ林の潜在的な広がり

ヨーロッパブナの潜在的な広がり
BOHN,U.; GOLLUB, G.; HETTWER, C.; NEUHÄUSLOVÁ, Z.;SCHLÜTER, H.; WEBER, H. (2003)

もし人為的な影響がなければ、ドイツのみならず、ヨーロッパ全土はブナに覆われていると言われています。耐陰性が高く、病虫害にも強いブナは、極端な環境(乾燥地、湿地、高温、低温)以外の場所では他の樹種に勝り、占有する森を作ります。

しかし、19世紀から20世紀にかけての針葉樹による林業の隆盛によって、ブナ林の面積は縮小していきました。本来ドイツの国土の3分の2を覆っていたブナは、現在では森林面積の15%、国土のおよそ5%まで落ち込みました。

80年代から90年代にかけて、環境への意識が高まり、近自然林業の概念が生み出されるなか、酸性雨や暴風による針葉樹一斉林の脆弱性も判明し、針葉樹林から混交林、広葉樹林への森林の転換が盛んになってきました。多くのトウヒの下にはブナが植えられ、ブナの復権が始まりました。

樹種別の蓄積量の変化

樹種別の蓄積量の変化

近年ではブナの量は増え続け、連邦森林在庫調査の結果からも1987年から2002年の間で、ブナ林の面積が151,000 ha(12 %)、2002年から2012年の間で102,000 ha (6 %)増加していることが分かりました。さらに今後の将来予測でも、ブナ林の面積はこのまま増え続けることが予想されています。

将来のブナの面積の予測

将来のブナの面積の予測

林業としてのブナ

ドイツの森林ではほぼ全ての面積で林業が行われているので、ブナ林の面積が広がっていることは、ブナによる林業が行われていることを意味します。

ブナの木材を利用する場合、胸高直径が60~70cmの、枝がない通直な丸太を6m~12mとることを目指します。しかし、木の成長速度が針葉樹に比べて遅いので、目標直径に達するまでに100年以上の年数がかかってしまいます。2012年の連邦森林在庫調査の結果では、トウヒの成長量が15.3m3/ha/年であったのに対し、ブナは10.3 m3/ha/年でした。また大きい樹冠のため単位面積あたりの本数も少なく、丸太のとれる長さも針葉樹と比較して少なくなります。以上のことから、林業の経済面で針葉樹と比較すると厳しい部分が見えてきます。

ブナの伐採

ブナの伐採

ブナの路上販売

ブナの路上販売

木材としてのブナ

ブナは漢字で木へんに無と書くように、日本では役に立たない木とされてきました。また、ヨーロッパにおいても、20世紀中頃までは主に薪などの利用に限られていました。木材としては固くはありますが、腐りやすい特徴を持っているのです。

ブナのイス

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しかし、加工技術の向上に伴いブナの用途も広がり、現在では250もの用途に利用されています。大径木のA材はツキ板に、小径木は薪などに使われますが、ブナのもっとも重要な利用は家具の用材です。曲木加工のしやすさから、曲線を活かしたイスなどが多く見られます。

日本でもブナ製品は様々な形で存在するので、黄白色から淡くピンクがかった綺麗なブナ製品を身近な所で探してみてください。

 

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