ドイツにおける森林戦略2020(土壌と水の保護)

 

2011年に策定されたドイツの森林戦略2020。今回は土壌と水の保護に関する項目を見てみます。

土壌と水の保護

現況

土壌は森林のエコシステムの中で、栄養素と水を木に届ける主要な役目を果たしている。そしてそこに住む様々な土壌生物は、森林の生物多様性に貢献している。森林土壌の腐植土は実はかなりの量の炭素を含み、それは今まであまり注目されてこなかった能力だが、大気中の炭素を固定している。

水保全に関しては、森林と森林土壌は水の流入や流出を穏やかにし、浸食を抑える役割を果たしている。それはまた、飲み水の高性能フィルターとしても機能しており、有害物質はここでろ過される。森林の下に浸透した水は、大抵高品質で、飲み水としてとても重要である。

それゆえドイツの林業にとって、森林のバイタリティ、生産性、安定性を維持するための、中心的な生産基盤である森林土壌の保護は非常に重要である。過度の有害物質の流入や、土壌圧縮といった土壌構造の妨害による土壌ダメージは、水浸透の質や量、浸食の耐久性の点において、水資源の利用者としての社会への望ましくない影響がある。

森林への硫黄の加入量は、80年代以降明らかに減少している。しかし、森林のほとんど全ての測定ポイントの窒素と酸性物質の値は、森林のエコシステムに有害な変化が恐れられる臨海負荷量を越えている。それによって、土壌の酸性化とフィルター機能の喪失の恐れがある。

持続する高い窒素の加入は、酸性化とともに堆肥効果がある。この森林のエコシステムの富栄養化は植生を変化させ、種の減少を招く。しかし、窒素の加入は、森林のエコシステムに負荷をかけるだけではない。それは地下水の質にも影響してくる。

 

将来的な課題

森林土壌とその能力は、ドイツでは特に酸性物質、窒素、有害物質の大気中からの加入により、危険にさらされている。長期にわたるそれらの加入は、ほとんど気づかれずに森林土壌の深くまで変化をもたらす。多くの森林のエコシステムが、その弾力性の限界のところまできている。

一方窒素が少ない場所での、バイオマスエネルギーのための全木集材(幹、樹皮、樹冠)は、長期的にみて栄養素の収奪につながり、栄養供給の不足を招く。木の伐採・集材のための過密な林内走行には、作業、技術、ロジスティックの革新が要求される。

森の小川

 

解決の糸口

・大気の有害物質の放出は、さらに引き下げられなければならない。臨海負荷量と酸性化や富栄養化の原因の大気有害物質、重金属、オゾンのレベルは2020年まで維持されなければならない。しかし、遵守が不十分なのは以前と変わらず窒素の加入である。
窒素の根本的な放出元は、畜産のアンモニア、堆肥、交通の窒素酸化物、電力産業と家庭の燃焼である。相応する規則は首尾一貫して実行され、必要であればさらに発展させていかなくてはならない。

・森林への石灰投入のような、酸性物質の加入の補償措置は今後も行っていく。

・木の灰の混入は、森林土壌への有害物質の蓄積を招いてはならない。また、収量増加のために堆肥を施してはいけない。

・政府は、ヨーロッパの土壌枠組み方針を拒否する。

・貴重な生産資本としての土壌の保護として、皆伐は州法の枠組みの中で防がなくてはならない。

・人間工学的、健康的、経済的な理由で木の伐採・集材に林業機械を投入する場合には、森林と土壌と環境に配慮して行わなければならない。また、この要求を正しく満たすためには、専門的な教育を受けた人員の配置は欠かせない。国と州は、新しい技術と方法及び現在の推奨方法の改訂の試験の際に、専門機関を援助する。

・土壌、環境保護区の木の伐採・集材の際は、特別に考慮した方法が適用、促進されなければならない(タワーヤーダー、馬搬)。

・保護地域、特にNatura2000のさらなる開発は、保護目標が著しく阻害または破壊されない場合のみ行える。

・全木の利用は、土壌及び自然保護の要求を適切に顧慮しなくてはならない。木の根の掘り起こしについては引き続き禁止されている。

・森林のバイオマスエネルギーのさらなる持続可能な利用のため、土壌の十分な栄養供給と、安定した土壌構造の場所を示す優先図作成ための統一的な指針を、発展していかなくてはならない。

・土壌や植生被害を防ぐため、現代的で革新的な伐採・集材技術と、効果的な作業道の入れ方のための教育を強化していかなくてはならない。

・水の涵養機能に貢献する林業の能力が、どのようにより適切に評価報酬を受けることができるか検討しなくてはいけない。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です