ドイツにおける森林戦略2020(狩猟)

猟銃

 

2011年に策定されたドイツの森林戦略2020。今回は狩猟に関する項目を見てみます。

狩猟

現況

森林と狩猟は結びついている。森林は狩猟鳥獣を含む多くの動物のすみかである。そして、狩猟は持続可能な林業に多大な貢献をしている。

連邦狩猟法では狩猟は、健康で生物多様な農林業の状況にも適した野生動物の密度状態を保ち、彼らの生活基盤の整備・確保するものとしている。

ドイツにはノロジカ、アカシカ、イノシシといった有蹄類が最も多く、全国に分布している。これらの種の捕獲数は、ここ40年間で急増した。ノロジカはドイツ全土でほぼ2倍になり、2009/2010の年では100万頭以上捕獲された。アカシカは50%増加(67,000頭)、さらにダムジカとイノシシにいたっては5倍の数字になった。

 

将来的な課題

捕獲数の増加は狩猟の強化を証明しているが、狩猟鳥獣密度の明らかな増加も示している。

高い生息密度の原因は複数考えられる。天然更新面積の増加、木の実の豊作、トウモロコシ畑の増加などの餌環境の変化や、穏やかで過ごしやすい冬の気候が高い繁殖率を導いた。

同時に、生息地の分断及び野生動物の安息地の減少は、野生動物の通常の生態行動を変化させ、狩猟を難しくさせている。

森林所有者の農林被害の訴えは著しく増加している。有蹄類は草食動物として木の一部を食べ、イノシシを除けば森林に多大な被害をもたらす。被害対策をとっていない19%の木には食痕や剥皮痕があった。剥皮被害はトウヒ、マツ、次いでベイマツで多い。ドイツでは2.6%(30万ha)の森林で剥皮対策を行っている。

気候変動に適した高収穫の経済的混交林の造成は、被害対策の投資が不要なくらいの、その地域に適した野生動物の密度状態でのみ成立する。最適な密度状態は、造林的に、農業的に、野生動物学的に、景観生態学的に非常に重要である。

農業と林業及び狩猟との間に起こる争いの原因は、しばしば不確かな法律の執行にある。連邦狩猟法は、森林と狩猟においての社会的目標の達成のために、明確な枠組みを規定している。野生動物は保護されなければならない。しかし、合法的な農業・林業・漁業の妨げとなるような獣害は、可能な限り防がなければならない。しかし地域的に、法的使命と実際的実行の間に大きな溝が存在する。

シカ

 

解決の糸口

・狩猟は持続可能な林業に多大な貢献をもたらす。適した狩猟の実行は、森林を維持し、その構造を豊かにし、森林のエコシステムの天然の更新を確実にする。

・野生動物の密度は、全ての主要樹種の天然更新が、柵なしで可能なレベルまでコントロールしなくてはならない。捕獲計画は狩猟動物数管理を顧みて、地域的な状況に合わせて行う。

・狩猟はとても感情的なテーマである。一方的な促進は争いを激化し、問題の解決にはつながらない。それゆえ、問題解決は全ての当事者による、持続的な議論によってのみ導かれる。森林所有者、農家、ハンター(狩猟者)、スポーツ協会、レジャー協会、自然保護団体などによって、地域で争いを減少させる計画と具体的な措置を発展させ、森林における狩猟の見本を作っていかなくてはならない。

・土地所有者とハンターは地元の議会において、それぞれの権利を行使しなくてはならない。問題は、地域レベルの政治家、行政、所有者、利益団体による政治的会話によって解決される。農林業被害を防ぐための情報や教育の提供は、法的な枠組みの中で土地所有者と狩猟権利者で拡大していかなくてはならない。今後も野生動物の生息空間は、林分状態の変化(混交林)や生息地、安息地の改善、訪問者の誘導といった措置によって森林と動物のバランスを整えていく。

・林業や狩猟に適した野生動物管理の関連事項と必要事項は、全ての当事者の参加のもと公開し、同時に基本的な部分の狩猟の教育は、さらに拡大されなければならない。地域的な狩猟団体は、基礎的な情報と知識を、世間へ提供していくことを強化していかなくてはならない。

・狩猟の有効性と効率性は、土地所有者の関心を含めて、さらに増加していかなくてはならない。

 

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