ドイツにおける森林戦略2020(財産・仕事・収入)

チェーンソー

 

2011年に策定されたドイツの森林戦略2020。今回は財産・仕事・収入に関する項目を見てみます。

財産・仕事・収入

現況

原材料としての木の利用は、ドイツにおいて重要な経済要素であり、森林所有者にとって木の販売は最も重要な収入源である。

ドイツの森林には160,000の私的または公的の林業経営体が存在し、4,200以上の森林協同組織が活動している。私有林の所有者の数は合計で約200万に上り、その値は森林面積の約47%に匹敵する。その他の森林面積の割合は、公有林が約20%、国有林が約33%である。

この様な所有形態の配分は、様々な地域的特性の中で森林の多様性にとても重要な役割を果たしていると言える。さらに、およそ100,000人の従業員が私的、公的な林業経営体に従事し、年間50億ユーロの売上を上げている。

その他にも森林は、例えば自然保護、保養や健康などに寄与する特別な能力を持っているが、それらは現状ほとんど評価されず、それに対する経済的対価といったものは存在しない。

フォレストワーカー

 

ドイツの林業は、120万人の従事者と、1,680億ユーロの売上(2009)を持つ木材産業クラスターに対し、適した枠組みの中で確かな原材料供給源として機能している。

今日の木材産業における経済価値は、主に針葉樹により成り立っている。2009年に針葉樹の木材生産が2,000万m3だったのに対し、広葉樹は100万m3でしかなかった。針葉樹は特に建築業での利用が主である。広葉樹は技術的な理由で、その有効利用があまりなされていない。

地域の森林から出る木材は、他のヨーロッパ各国においても、木材産業の重要な原材料である。2007年のEUでは木材産業、製紙産業、印刷産業及び家具産業で、約330万人の従業員と約365,000の企業が存在しており、その売上は年間4,540億ユーロに達する。

 

将来的な課題

針葉樹は、将来的に需要が増加すると見られているが、林相における針葉樹の割合からすると中長期的な供給不足の恐れがあり、それが針葉樹の製材工場、合板工場、繊維工場の移転の可能性につながる。それにより地方の雇用と経済が脅かされるかもしれない。

一方、森林における広葉樹の面積はここ数十年間で増加し、蓄積量も増え続けている。現在、林業はその成長量の約半分しか利用していない。多くの広葉樹材には未だ、加工・利用能力、革新的な技術開発及び高い経済価値のある将来的な売上市場が不足している。

平均面積が10haより小さいような森林所有者のグループは、職業としては主に林業以外に従事している。彼らの個々の目的は様々だが、森林と距離が離れるに従って林業への参加意欲や、林業的知識の習得といった興味が失われていく。

このような、森林の整備や伐採に不都合な所有者構造は、今後の人口統計学的な発展と地方の構造変化によりさらに加速していくであろう。

 

解決の糸口

・政府は私的な所有の分散を支持し、さらにその補償に力を尽くす。

・責任のある、持続可能な森林利用と森林の機能確保の基礎は、健全な林業経営体と森林協同組織にある。能力が高い、国際協力のある木材産業の土台は林業である。林業の基本的方針は、雇用や経済価値と結び付いた森林の環境的及び社会的な機能を、将来的にも保障、拡大されなければならないということである。

・原則、政治的又は法的な基本的枠組みとして、森林所有者は経済的に自立して、市場に対して持続的に存在を確立していかなくてはならない。

・森林に対する社会、気候政治、環境、経済などの要求の増加に考慮して、生活基盤配慮及び公共の福祉の面で、公的に小さな私有林所有者に対する適切な助言を拡大していかなくてはならない。

・10ha以下の私有林であっても、組織的及びロジスティック的な構造問題を補償しながら、森林のポテンシャルの活用のための整備改善をしていく。

・森林協同組織の振興を、特に専門家の配置によって強化する。専門家はこれまで受け身であった森林所有者に情報を与え、森林協同組織に加入するよう助言する。持続的に利用可能な森林を整備伐採していくことにより、同時に森林の安定性の効果が得られる。

・針葉樹のポテンシャルを持続的に利用し、それによって地方の大きな雇用者であるパルプ産業、繊維産業の移転のリスクを下げることは、雇用の補償にとって重要である。

・広葉樹のポテンシャルを利用するために、パルプ産業、繊維産業、製紙産業はさらなる革新的な、資源に有効な利用可能性を追求しなければならない。

・雇用者は労働者に対する責任を有する。重点は一般的な社会的基準、効率的な健康管理や事故防止、現代的な労働時間、能力に応じた支払いなどである。

・将来的な林業のためには、資格を持った独自の専門家とサービスプロバイダーが必要である。森林所有者と林業経営者は、彼らと信頼関係を築き、共に働くことを勧められる。 

・森林の複合的な機能を保障するために、十分な教育を受けた専門家を最低限の人数を確保しなくてはいけない。この点においては、公的な森林所有者が大部分の責任をおっている。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です