森林認証制度のひとつであるFSCでは、2018年6月1日にドイツ国内の新基準「ドイツスタンダード3.0」が施行されました。より厳しくなった基準によって、林業経営はどのように変わるのでしょうか。
FSCの原則と基準
FSCの森林管理の認証基準には、世界的に統一した10の原則と70の基準が定められています。この原則と基準に基づき、それぞれの国の実情に合わせた国内基準が定められています。
原則1:法律の順守
原則2:労働者の権利と雇用状態
原則3:先住民の権利
原則4:地域社会との関係
原則5:森林のもたらす便益
原則6:環境価値とその価値への影響
原則7:管理計画
原則8:モニタリングと評価
原則9:高い保護価値
原則10:管理活動の実施
ドイツ国内基準の改訂作業
学術的なデータは年々蓄積され、林業における作業方法も常に見直されているため、FSC国際本部では、国内基準の定期的な見直しを求めています。ドイツにおいても、2012年に適用されたVer2.3の基準の改訂作業が行われ、数年の検討期間を経て新たな国内基準、「ドイツスタンダード3.0」が2018年6月1日に施行されました。
より現在の時代に合わせた新基準において、以前の基準からどのような変化があったのか、いくつかの変更点を見ていきましょう。
保護区の設定
以前の基準においても、「参照地」という名の保護区が設定されていました。「参照地」とは、各事業体の森林内に設定された区域で、人為的な手を加えることなく自然がどのように発展していくかを見守る場所です。この場所で自然の変化を観察し、林業施業地と比較することで、より近自然的な施業への造詣を深めることができるのです。
過去の基準では、1,000ha以上の連邦有林・州有林・公有林は、森林面積の5%を「参照地」として設定することが求められていました。
新しい基準では、その設定がさらに厳しくなりました。また、「参照地」という名称に代わり、「自然林発展地」という名称が付けられました。名称の変更の目的は、保護区が自然変化の学習目的だけでなく、動植物の保護の役割が大きくなったことも関係しています。
「自然林発展地」の規定面積は新基準において、連邦有林・州有林は10%、1,000ha以上の公有林は5%、私有林や1,000ha以下の公有林は第三者からの保障において、5%の森林面積を保護する必要があると定められています。
例えば1,000haの州有林では100haもの面積を、林業の経済的利用から外さなくてはいけません。「自然林発展地」の面積は一箇所にまとめて取る必要はありませんが、25ha以上のまとまった面積が推奨され、最低でも0.3haの大きさとされています。小さな面積の「自然林発展地」は、他の「自然林発展地」を繋げる飛び石的なイメージになります。
作業道の減少
平野部などの森林ではかなりの密度で作業道が入り、ハーベスターによる作業が行われています。以前の基準においては40m間隔の作業道が推奨されていましたが、20m間隔までは認められていました。
新基準では、作業道の間隔の規定ではなく、代わりに作業道の面積を森林面積の13.5%以下にする基準になりました。この基準で作業道を設定すると、65%の面積で40m間隔、35%の面積で20m間隔にしなくてはいけないことになります。作業道の減少は伐採コストの増加につながります。
林業において、FSCの新基準で定められたような高い環境基準をクリアするためには、かなりの経営コストがかかります。認証材にプレミア価格がつき、コストを補てんできるような仕組みが求められます。
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