人が森に望む機能は様々です。多様性、多機能性を重視するドイツの森においても全ての人々の要求に答えることはなかなか困難です。連邦森林在庫調査の結果、ドイツの森の近自然化が進んでいることが分かりましたが、その結果には一様ではない反応があります。
近自然的なドイツの森
上の図は森の構成がどれだけ近自然的かを示しています。連邦森林資源調査の「近自然的」の基準は、現在の樹種と潜在自然植生の樹種を比較してその度合いを判定しています。
判断の基準が樹種のみと、やや一元的な面があるものの、成熟した木では「非常に近自然的」~「やや近自然的」までを含めると77%が「近自然的」な度合いとなっています。また、若い木では「近自然的」の割合がさらに高くなり、将来的にドイツの森がより本来の自然に近い森になる可能性を示しています。
持続可能な木材利用
森林の蓄積はどのようになっているのでしょうか。
2002年と2012年の森林の蓄積長を比較すると、その数値は6.6%伸び、1haあたりで換算すると336m3になりました。持続可能性という言葉を原理的な意味で捉えると、木の成長分以上の木材を使わないということですので、その点で言えば現在のドイツ林業は持続的だと言えます。
環境保護団体の批判
これまで見てきたように、森林所有者やフォレスターが誇るドイツの森では近年の施策により、徐々に近自然化が進んでいることが分かりました。また森林蓄積量も増えきています。
しかしながら、常に高い要求をするドイツの環境保護団体はこの調査の結果を受け、ドイツの森はまだまだ「近自然的」ではなく「遠自然的」だと批判しています。東ヨーロッパの原生林と比較して、まだ蓄積が足りない、まだ樹齢が足りない、まだ広葉樹が足りない、まだ枯死木が足りないと言うのです。
木材産業の不満
ドイツの森林・木材関連産業に従事する人は100万人以上で、自動車産業以上だと言われています。このような一大産業の中にある製材業界、建築業界なども連邦森林在庫調査の結果を注視していました。
現在のトレンドである広葉樹の増加、針葉樹の減少について彼らは今後の針葉樹材の供給不足について危惧をしています。針葉樹の供給が減ると、地元の森の木材だけでは需要をまかなえなくなる危険があるのです。また、環境保護団体とは逆に、樹木の高齢化について不安の声を漏らしています。樹齢が高くなり過ぎると病気にかかるリスクが増し、ひび割れが入ることもあり、木材の価値が下がってしまうためです。
地元の木を守り、遠方や他国の木を使用することは環境保護の観点から矛盾が生じることになります。保護と利用のバランスをいかにとっていくかが、持続可能性のカギとなっていくことでしょう。
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