ドイツにおける森林戦略2020(原材料・利用・効率)

木材

 

2011年に策定されたドイツの森林戦略2020。今回は原材料・利用・効率に関する項目を見てみます。

原材料・利用・効率

現況

木材原料の国内需要はここ20年間で持続的に伸び続け、現在ではおよそ年間1億3000万m3にも上る。木材原料というのは総体的なもので、一部重複したものも含んでいる。木材原料には森林から伐採された木のほか、解体時廃材、公園の整備などで出た都市廃棄物、建築時廃材などが含まれる。

割合としては、7,700万m3が素材として、5,300万m3がエネルギーとして利用されている。傾向としては、針葉樹材の利用が増加している一方、広葉樹材は減少している。ここ数年にドイツで製材工場、パルプ工場、繊維工場で新たに増強された能力は、主に針葉樹のためのものである。針葉樹を元にした革新的な製品は、建築材としての木材を常に新しい利用領域へ広げることに貢献している。

目下、7分の1の建物が木材で建てられているが、再生可能な素材のさらなる可能性は、高断熱建物への改修、複層階建て建物、工業的な建物にある。ほかには、パルプ・繊維素材の需要だけでも2000年から2009年の間に、年間1,900万m3から3,600万m3へ増加している。

さらに、エネルギー利用のための木材需要が伸びてきている。2006/2007年には全ての針葉樹材が、急激な値上げと共に経済上の供給ネックを引き起こした。2007年始めの暴風雨“キリル”により、木材市場は一時的に落ち着いたが、現在針葉樹材は新たな供給不足が浮かび上がっている。

木は再生可能な原材料で、素材として、またエネルギーとしてなど多彩な利用方法がある。今日でも世界的におよそ10%の1次エネルギー需要はバイオマス、特に木が担っている。2~2.5kgの木のエネルギー価値はおよそ1ℓの灯油に相当する。木は石油やガスに比べて明らかな経済的利点がある。

そして木は、比較的リスクが少なく生産され輸送される。再生可能なエネルギー素材としての木は、ほとんどの場合その近隣で取れ、石油とガスの輸入依存を和らげ、経済価値がその場にとどまることによって、地域の経済循環に貢献している。

燃焼の際の排出ガスの量は、革新的な技術開発によって現在とても低いレベルにあり、遅くとも2025年までには、排出のほとんど出ない技術が市場に投入される。

木の、特に熱と電気としての利用は、ここ数年の石油燃料価格の乱高下や値上がりのせいで増加している。また、2009年の半分以上の燃料としての木の利用(2,800m3)は個人利用であった。それは主に製品として利用価値がなく、価格競争力を持たない、薪という形での利用であった。

政府の2020年までの気候目標到達のためには、木の、さらなる効率的な利用が促進されなければならない。エネルギー効率の良い新築や高断熱に改築された家、燃焼効率の良い新型のストーブは、木のエネルギーとしての需要を緩和する。

薪の燃焼

 

将来的な課題

専門家によるシナリオによると、ドイツの木材需要は今後さらに増加する。予想された木材の需要を、持続的に世界の市場で満たされるかどうかは今日の視点では不確実である。

中国は、日本から世界一の木材輸入国の座を取って代わった。ロシアのような巨大な木材生産国は、輸出関税などで自国の木材の価値を高めることを試みている。

最近のWTOの枠組みの状況は交渉を容易にさせているが、木材輸入の経済的条件の分析では、積み替えや輸送コストは原材料の大幅な値上がりにつながるとしている。ライフサイクルアセスメントへの考慮(例えば輸送のエネルギーの投入)のほかに、輸入の際にはその木が合法的かつ持続可能的な森林から由来しているかを確かめなくてはいけない。

このような背景から、素材効率や循環経済といったことが徐々に意味を持つ。木材と製紙といった分野は、どのように経済的な利益と環境的な利益が密接に結びつくかを示している。2000年から2009年で、紙のリサイクルが60%から70%に上がったことは重要な例だ。同様に、パルプ産業や繊維産業が建築時廃材や解体時廃材を利用したり、木材産業が残滓材の熱や電気利用を強化し、独自の製品循環を作っている。

木材原料の需要をまかなうために、森林の外での早生樹の超短伐期栽培も考えられる。ドイツでの作付けは現在3,000haと少ないが、集中的な農業や他のバイオマス作物栽培と比較して、早生樹の超短伐期栽培は地域の環境に合った樹種を選択すれば、栄養バランスと土壌形成と生物多様性といったものに関して、環境的に良い影響を与えると指摘されている。

 

解決の糸口

・木の伐採に関して、平均的な年間成長量を最大限に利用する。(政府の気候交渉の参照シナリオの年間約1億m3をベースとして)。森林は二酸化炭素吸収源として保持される。

・原料の枯渇を回避するための最初の一歩は、原料の効率的な節約利用である。原料の利用効率の上昇のために、廃棄物だったものを経済的循環にのせ、廃棄物を減少させることが不可避である。原則的に、枯渇する原料の合理的なカスケード利用は、木材産業や製紙産業においてさらに強化されなければならない。このようにして、研究的措置の支えのもとに、余剰を生みださなければならない。

・原料の利用効率増加のための糸口は、素材的に、そしてエネルギー的に原材料としての木を利用し尽くすことである。そのためには、例えば木の変換技術や、建物の改修、高効率の小型のストーブや熱電併給ステーションの設置のように消費を下げる措置が必要である。

・持続可能なバイオマスの効率的なエネルギー利用のさらなる足がかりは、コジェネレーションの活用である。コジェネレーションは熱と電気を同時に生み出すことで、高いエネルギー効率を実現し、さらに排出ガスも少ない。

・素材的またはエネルギー的な利用の競合性の観点から、政策的な阻害要因は回避しなくてはならない。

・森林外の早生樹の超短伐期栽培の作付けは、比較的早い期間(3~10年)での木の供給、特にエネルギー利用のための木の生産に寄与する。適した栽培地における早生樹のポテンシャルは、自然の生産条件に依存する部分がある。しかし、品種を厳選することによって長期的に収量が増加する可能性があるので、作付けの際には十分な調査が必要である。

・景観整備などで出た木材の利用強化も、木材原料供給の拡大につながる。調査によると、500万m3の木が景観整備から出て、小型のバイオマス発電で使われている。しかしこれでも景観整備で出る木材の20%しか使用していないと思われる。

・バイオマスの認証には、現存しているPEFCやFSCといった森林の認証制度が適している。

・市場の透明性を確保するため、また経営的、政治的な決定の基礎とするため、根拠のあるデータが必要不可欠である。森林・木材産業は持続的な市場レポートを保証する必要がある。連邦森林在庫調査と木材収入予測は将来的に国と州により実施される。第3回の連邦森林在庫調査をもって、ドイツの詳細な木材収入予測は作成される。

・木材産業クラスターは、地域的な、または広域的な共同作業を組み立てられるように基本的枠組を改善しなければならない。そしてそれをもって森林・木材産業の競合能力をさらに強化していかなくてはならない。

・高い環境基準によって規定された、持続可能な林業から伐採された木や木材製品の認証制度(例えばPEFCやFSC)といった手段は、最終消費者の木材製品の購入の際の決定要因となるため、さらに発展させていかなくてはならない。国の木材製品の調達ルールは規範となり、公的な州や市町村や私企業はそれに則らなくてはならない。

・現存する、持続可能な利用が可能な森林木材のポテンシャルは整備伐採され、市場に運び出されなければならない。その際、現在ある整備伐採の手段をさらに発展させ、効果的に投入されなければならない。それには、森林所有者、特に小さな森林面積の所有者に、森林の土地整理や賃貸といった助言や世話する森林協同組織が重要である。

 

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