森林は木材生産の場だけでなく、貨幣価値では計りきれない色々な機能を持っています。社会の様々な関心・要求に応えるためには、森林の多機能性を高めていく必要があります。
多機能性とは何か
木材生産をする必要があるが、動植物も守りたい。国土が広ければ、ある地域で林業を行い、ある地域を保護区として指定すれば済む話かもしれません。しかし、国土が狭いドイツのような国では、ほぼ全ての森で様々な要求を同時に満たす必要があります。そして森林にはその機能があるのです。
森林の機能にはどのようなものが含まれるか、持続可能性の3要素である経済面、環境面、社会面の観点から見ていきましょう。
経済面:利用機能
人は過去の時代から木材を重要な資源として利用してきました。現在のドイツにおいても、木材を構造材、紙製造、家具、エネルギーなどに利用して、その重要性は変わっておりません。
日本の人工林とほぼ同等の森林面積から生産されるドイツの木材供給量は、年に5,300万m3以上にもなります(日本は約2,700万m3)。そして、森林の関連産業全体には100万人以上が従事しており、一大産業を形成しています。
環境面:保護機能
森林には地球環境にとって、人間にとって、重要な保護機能を持っています
・自然保護
動植物の生息環境を守り、生物多様性に貢献します。
・土壌保護
雨や風から土壌の浸食を守っています。また、斜面での落石を防いでくれます。
・騒音保護
木の葉などが騒音を軽減します。
・雪崩保護
雪崩の発生の防止、又は雪崩のブレーキになります。
・水の保護
スポンジのような森の土壌が水の流入・流出を安定的にしてくれます。
・気候保護
気候の安定性を高める働きがあります。
・ガスなどからの保護
空気中の排気ガスやほこりを浄化するフィルターの役割を果たします。
・景観保護
地域の景観をつくり、また不快な建造物などを隠します。
・道路保護
落石や横風から道路や線路を守ります。
社会面:保養機能
歩くのが好きなドイツ人は老若男女を問わず、森へ散歩に行きます。また、ゆっくりと歩くだけでなく、スポーツ、例えばジョギングやマウンテンバイク、乗馬などもできます。森は環境教育の場としても使われ、森の機能の説明や重要性を学ぶ環境学習が行われています。
利用機能・環境機能・保養機能の3つの機能は互いに密接な関係であり、競合関係にもあります。これらの機能をいかにバランスよく高めあうかが、社会の要求であり、森林官の役割であり、ドイツ林業の真髄なのです。
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