テューリンゲン州の近自然林業

森林

 

テューリンゲン州はドイツの中央部に位置し、長さ120km、幅35kmの山地である「テューリンゲンの森」などが有名です。州の森林面積はおよそ550,000haになります。

テューリンゲン州の近自然林業

造林目標

テューリンゲン州の国有林が定める造林目標は、近自然的な恒続林としています。近自然的な恒続林は、その場所に適した、多様な樹種の、構造豊かな、様々な樹齢から成る森林で、その安定性と柔軟性により、生物的または物理的な森林被害のリスクを最小限にし、天然更新を主体に、持続可能な多機能な森林を可能にします。

恒続林は定期的な森林の利用によって作られます。現在ある一斉林は、造林目標を目指して行われる森林作業によって、徐々に恒続林に移行していきます。近自然的な造林は、森林の発展を可能な限り自然の合理的な力を使って行います。

多様な樹種の存在は、リスクの分散につながります。陰樹や半陰樹の他にもナラ、カラマツ、マツなどの陽樹も、その土地の環境に合わせて必要となります。

近自然的林業は森林エコシステムの自然な多様性を促進し、そのダイナミズムを利用し、安定性と柔軟性を高め、林分や土壌に対する被害を防ぎ、遺伝的多様性を確保します。

基本方針

テューリンゲン州の国有林は近自然的な造林により、持続可能な林業という目標を実現します。

近自然的な混交林の発展には、確実な天然更新が必要であり、それには継続的な狩猟が重要です。木材生産や木材利用は、目標を達成するための最も重要な要素です。

一斉林から恒続林への移行は、形質の良い木を残し強度な間伐を行います。その際、林分の樹齢は、生産目標や作業強度の設定条件にはなりません。

注意しなくてはならないのは、森林エコシステムや景観に対して、短期的な大きな変化を避けることです。皆伐や傘伐などは、一様な樹齢の稚樹をもたらすことから認められません。

1990年代からテューリンゲン国有林で守ってきた、近自然的な造林の原則を以下に記します。

1.森林立地の多様性を顧慮
2.多様な樹種の近自然的な混交林の発展を促進
3.異なる樹齢の複層の恒続林的な構造の発展の促進
4.適地適木の天然更新の優先
5.皆伐の禁止、更新は可能な限り樹冠の傘の下で行う
6.将来木の保育
7.健康で価値が高まる樹齢での目標直径利用
8.遷移的な発展段階の考慮
9.生態的また経営的に適した野生動物の密度の維持
10.森林や土壌に対する悪影響の防止
11.森林の自己調整機能の強化
12.林業内への特別な自然保護目標の組み込み

テューリンゲン州のハビタット木・枯死木コンセプト

森林

森林の利用機能と保護機能を同じ場所で発揮させるということは、お互いの機能の妥協点を探るということになります。この妥協点が、ハビタット木や枯死木の選択による、部分的な森林の老齢段階の保存になります。

このコンセプトは、森林における種およびビオトープの保護状況を改善し、自然保護的に重要な構造(営巣木、ハビタット木、枯死木など)を全ての森林面積において長期的に組み込むことを目的としています。このコンセプトによって選択されたハビタット木や枯死木は、既に設定してある自然保護区の間を飛び石のように繋ぎ、ネットワークを形成します。

保護されるべき対象

・胸高直径が35cm以上で腐朽、樹皮剥がれ、キノコ、二又木の折れ、太い枝の折れ、樹冠の折れ、太い枝や樹冠部の幹の枯れ、雷の痕、病気、奇妙な形状などがある木
・更新地における、前世代の木の残り
・樹液が表面に流れており、それを利用する昆虫が存在する木
・ブナ、ナラ、ポプラの胸高直径60cm以上の木、それ以外の樹種で胸高直径45cm以上の木
・直径に関わらず全ての営巣木、穴の空いた木

これらに選ばれたハビタット木は、それらが自然死し、枯れ木となり、朽ち落ちるまで放置されます。

枯死木とハビタット木の選択に対する助言

枯死木とハビタット木の具体的な選定は複雑で、慎重な考慮が必要になります。連邦自然保護法やテューリンゲン州自然保護法、自然保護学、また労働安全、交通安全、森林保全などの観点を考えなくてはいけません。また、多機能林業における経済的視点も忘れてはならない項目です。

営巣木や穴の空いた木以外では、中径木や大径木の広葉樹を優先して選びます。生物多様性の観点や経営的な観点でも、これらの木を選ぶことは有効です。

選択する木の数量は、主にその場所の潜在的なポテンシャルによります。FFH指令の評価を参考にすると、平均で1haに3本のハビタット木と2本の枯死木を推奨します。

ハビタット木や枯死木の配置は、なるべく集中して行います。これらを必要としている多くの種は移動範囲が狭く、ハビタット木のグループと、またそれらのグループが繋がるような飛び石的な配置が重要です。

林道の近くや登山客、自転車や乗馬が多い場所、ベンチや小屋や掲示板があるような場所の配置は行なわないようにします。

林業的に、経済利用が難しい場所でのハビタット木の選択は有効です。また労働安全のためにも、ハビタット木をグループ状に設定し、その範囲を集中させます。

 

 

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