近自然林業とは一体どのようなものか?

森林

 

近自然林業は、森林のエコシステムを維持・観察し、自然のプロセスを利用する林業です。ドイツでは90年代頃から州有林などにおいて取り入れられました。しかし、近自然林業を行うために、具体的にはどのような施行をすればいいのでしょうか?

近自然林業の定義

実は近自然林業という言葉の定義は幅広く、明確な基準はありません。実際にドイツ各地(ヨーロッパ各地)で近自然林業が行われていますが、指針において多少の違いが存在します。しかし、一般的に近自然林業と言えば下記のような指針を規定しています。典型的なものをいくつか挙げていきます。

・皆伐の禁止

・適地適木な樹種選択

・鳥獣の適切な個体管理

・病中害に対する化学薬品の使用の禁止

・混交林・複層林の促進

・天然更新の促進・活用

・老木・故損木、ビオトープ木の保護

・土壌の保護

以上のような指針は、イメージとして森林認証の基準に近いものがあります。このような持続可能な林業を第3者が審査し、認証するものが森林認証制度になります。

概念イメージ図

概念イメージ図

上の図のようなそれぞれの概念には解釈の幅がありますが、森林認証では全国で統一した数値などで基準が計られるようになります。

近自然林業に関する誤解

自然のダイナミクスを利用する近自然林業には、いわゆる“エコ”なイメージが湧いてきます。そのようなイメージから起こりうる誤解をまとめてみました。

・林業機械を使わない

近自然“林業”ですので、当然路網を入れ、機械も使います。経営体として、経済的に成り立つことが重要です。

・外来種は使わない

在来種が勧められてはいますが、外来の樹種も禁止されてはいません。

・針葉樹は使わない

潜在的に広葉樹が生えるような場所では混交林になりますが、単一種の針葉樹林もあります。

・植林をしない

天然更新を活用しますが、天然更新が期待できない場合は植林をします。

・柵を使わない

適切な野生動物数が維持されていれば問題ありませんが、食害がひどければ植林地を柵で囲います。

以上のように、従来の森林施業に対して実は劇的な変化というものはありません。重要な点は、自然の合理性との利用と、森林のエコシステムの保持です。

写真で見る近自然林業

近自然林業を行っている森はどのような森か、という一概的なイメージはありません。

各地の環境に合わせて、その表情は変わっていきます。

数枚ずつですが、近自然林業を推進しているドイツ南西部バーデン=ヴュルテンベルク州の2カ所の森の写真を掲載します。どちらも通常の林業を行っている森林です。

こちらは1カ所目、標高が低い場所の森で、広葉樹の割合が高くなっています。

ドイツの森林

この写真にはマツが数本、その他にはブナが写っています。マツの何本かに伐採のマーキングがしてあるので、今後ブナを大きく育てることになります。

ドイツの森林

こちらも上の写真と同じ林分です。ナラの葉も見えます。写真右のマツは枯れていますが、枯死木に住む生き物のために残してあります。

ドイツの森林

太いナラの木が何本か見えます。

ドイツの森林

針葉樹の林分ですが、下層、中層に若い木が育っています。

 

こちらから下は2カ所目です。標高はやや高く、針葉樹がメインになります。

ドイツの森林

 ドイツの森林

1枚目はトウヒ、2枚目はブナの林分です。

ドイツの森林

中層にも若い木が生えています。

ドイツの森林

若い針葉樹の林分は、やはり過密で暗くなります。

ドイツの森林

フォレスターが大きな針葉樹にマーキングを行い、ビオトープ木として保護しています。この木は伐採から免れ、将来的に枯れて土となるまでにたくさんの生き物に利用されます。その奥にある枯死木も、鳥による穴が空き、キノコが生え、生物多様性に寄与していることが分かります。

 

以上、今回は近自然林業について簡単な紹介しました。少しでも近自然林業に対するイメージが浮かび上がってこられたら幸いです。

 

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