ハリネズミの憂鬱

ハリネズミ

 

日本ではペットとして飼われているハリネズミ。ヨーロッパでは野生動物として古くから生息していますが、今日ではその生息場所の多くが人間の生活域と重なり、問題も生じています。

ハリネズミの生態

・体長 24-28cm

・体重  800-1,500g

・五感 餌や仲間の匂いに敏感。聴覚や触覚も優れている。視覚はやや劣る。

・形態 毛が変化した針を背中に6,000-8,000本まとい、危険時には体を丸め、針を突き立てる。

・天敵 キツネ、イタチ、アナグマ、ミミズク

・食物 ミミズ、カタツムリ、昆虫、さなぎ、幼虫、小さなネズミ、ナッツ、果実など

・生態 夜行性。単独で行動し、縄張りを持つ。林縁、草地、公園、庭などに生息。冬眠をする。

 

人間の居住地は危険がいっぱい

ハリネズミの本来の生息場所は、隠れ家や餌が豊富な、明るい混交林や林縁、藪などの構造が豊かな場所でした。しかし、人間による土地の開墾や、単一的な大規模な農業、森林の伐採、道路の整備などによって、ハリネズミの生息環境は破壊され、ハリネズミは公園や庭などの人間の生活域に追いやられていきました。

しかし、ハリネズミの生態は人間の生活域にも適し、現在は人間にとって身近な野生動物として存在しています。

人間の生活域の中でうまく暮らしているハリネズミですが、やはり小さく弱い動物には、人間の活動による多くの危険が潜んでいます。ハリネズミにとっての危険とは、どのようなものがあるでしょうか。

・町中はハリネズミにとって危険な空間です。足の遅いハリネズミにとって道路の横断は命がけで、多くのハリネズミが交通事故で死んでいます。

・庭などにまかれる過剰な殺虫剤、除草剤、化学肥料などによりハリネズミの餌がなくなったり、ハリネズミに直接触れたり摂取したりして有害になる場合があります。

・工事の穴や、グレーチングや階段などはハリネズミの落とし穴になります。

・庭などの枝葉を急に燃やしてしまうと、その中に隠れていたハリネズミが巻き込まれます。

・庭に捨てられたプラスチックやガラスや金属のゴミによって、ハリネズミが抜けなくなったり、傷ついたりします。

・草刈りで使用する刈払機によって、多くのハリネズミが傷ついたり、命を落としています。

・庭に池がある場合、ハリネズミが落ちて陸に上がってこられない場合があります。

ハリネズミ

ハリネズミの保護のためにできること

ハリネズミを守るために、個人として一体どのようなことができるでしょうか。

・夜間走行の注意

夜行性のハリネズミは、夜の道路に現れます。運転に注意し、ハリネズミを見つけたら後ろの車に注意してブレーキを踏むか、タイヤの位置をずらしてひかないようにします。

・隣の庭への移動経路を確保する

ハリネズミは広い範囲を、餌や異性を探して移動します。隣の家の庭との境にあるフェンスの網目を、ハリネズミが通れる穴の大きさにしたり、フェンスを地面まで着けないようにします。柵などの場合も、抜け道を空けておきます。

・殺虫剤、除草剤、化学肥料などの使用の禁止

殺虫剤は、ハリネズミの餌となる昆虫を殺してしまいます。またそれらの化学薬品は、直接ハリネズミにとってどのような影響があるか分かりませんので、使用はなるべく控えます。

・庭の一部分だけを刈る

短い芝ではハリネズミが昆虫やミミズを見つけやすくなりますが、庭の縁などは刈らずに残しておきます。また刈払機の使用時は、事前に刈る場所を十分に確認してから刈ります。

・新しい隠れ場所の提供

生垣、落葉や小枝の山、コンポストの山を作ったり、または手作りのハリネズミの家を制作し、ハリネズミの寝床や冬眠場所を提供します。

・水飲み場の提供

平たい容器に水を張っておけば、渇いた夏の水飲み場になります。

・枝葉の山の注意

庭の枝や葉を崩す時や燃やす時は、事前に注意深く中を調べます。

・穴やグレーチング、階段に配慮

ハリネズミが落ちてしまう穴は塞いだり、階段にはレンガを置いたりして、落ちた時に登り易くします。

・池に救出用の橋を作る

ハリネズミが池に落ちた場合に自力で登れるように、登り用の板などを設けておきます。

・ゴミに注意

ゴミ袋を締めておき、ハリネズミが入り込まないようにしたり、庭にゴミが落ちていない状態にします。

 

人間が生活圏を拡げると、野生動物の生息圏を狭めてしまう事実は存在します。ハリネズミのような、人間の生活環境に適して暮らせる動物も、やはり人間生活によって傷つけられたり、命を奪われたりしてしまいます。少しの配慮によってお互いのより良い共存が図れることが、より多くの人間に伝わればいいですね。

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