ニーダ―ザクセン州の近自然林業

森林

 

ドイツの中央部から北西部に位置するニーダ―ザクセン州。ニーダ―ザクセン州の国有林では、1991年に近自然林業の13の原則が定められ、現在でもそれに沿った林業の施業が行われています。

ニーダ―ザクセン州の近自然林業

原則1. 土壌の保護および地域に適した樹種選択

土壌は全ての森林エコシステムの基盤であり、樹木の生長や水の保持そして炭素貯蔵庫として重要な役割を果たす。森林土壌の能力の保持と再生は、非常に重要である。物理的化学的な土壌性質、そして土壌の生物群集を維持しなくてはならない。そのために、機械的なかく乱や、肥料の投入を行ってはならない。

過去の経済的利用または大気中の有害物質の流入によって損傷を受けた土壌の再生は、生態系などへの影響がなければ、それを促進する。

木の全幹の利用は、許可された場合のみ行える。湿地などは保持し、可能な限り再生する。

森林はその場所に適した樹種によって構成し、土壌にネガティブな影響が与えないよう、そのポテンシャルを最大限に利用する。自然に近い森林群落は、引き続きその樹種で更新を行い、若返らせる。その際、気候変動については十分に考慮をする。

 

原則2. 広葉樹林、混交林の促進

様々なリスクの回避、気候変動への適応および生物多様性の確保、そして木材などの素材供給のために、混交林を促進する。

トウヒ、マツ、ブナの一斉林は、自然の環境に適した混交林へ転換する。一斉林は、極端な環境の場所のみ残される。

国有林の目標は、木や他の植物や動物の生物多様性を高めることである。混交林においては、環境的な要因から広葉樹が優先される。広葉樹の割合は長期的に65%まで高め、針葉樹は35%とする。

 

原則3. 環境的な有益性

進化においてそして自然の森林発展において、様々な生育領域で発生した樹種の多様さを広範囲で促進する。地域在来の樹種は、その地域の気候や土壌条件に適し、安定性を確保する。

このプログラムでは在来種を優先するが、気候のためや木材生産のために外来樹種の混交も可能である。その際には、森林のエコシステムの能力、安定性、弾力性が阻害されないよう慎重に注意しなくてはならない。導入された外来樹種は、生態系に有益でなくてはならない。それはその場所に適し、土壌を改良し、自然更新が可能な、造林がしやすい、混交樹種として在来の植生にうまく適合するものとする。

 

原則4. 天然更新の優先

その場所に適した樹種構成で、既に近自然的な林分は、天然更新を優先する。しかし歴史的に、国有林には未だ構造が単純な一斉林も多い。

目標に沿わない、先駆種の森林、一斉林、本来の分布ではない森林、遺伝的に適していない林分などは、植林や播種によって古い林分の樹冠の傘の下で、適した森林へと移行する。その際遺伝的に適した、由来が判明している素材を使用する。

 

原則5. 森林構造の改善

森林の安定性と回復力および生態系のニッチな環境の提供は、垂直や水平の森林構造によって高めなくてはならない。樹種の様々な特性のほかに、造林の方法も森林構造の造成に寄与する。森林はそれゆえ、常に木が生えているように育成、利用、更新し、構造が複雑な森林に発展させる。

そして樹齢の違いや、小面積の場所ごとの成長段階の違い、直径や高さの違いも重要である。豊かな森林構造は、恒続林によって実現できる。そのため、皆伐は可能な限り避ける。皆伐は陽樹、例えばナラなどのひらけた環境が必要な樹種の割合を増やす場合に限られる。またその場所に適していない林分を、典型的な混交林へ転換する場合に、他の方法が不可能であれば小面積の皆伐も許可される。

 

原則6. 目標直径利用

森林は可能な限り高齢にし、単木やグループによる伐採方法で利用する。個々の木の成熟は、その木の成長力、品質、危険度によって判断する。目標直径での利用は、木材の価値の低下、成長力の低下、必要な更新、育成、自然保護の措置を考慮して行えば、経済的にみて最も価値が最大になる利用方法である。

目標直径利用は場合によっては、森林構造の改善、林分の安定、次の世代の木の光の要求など観点によって変更される。

イノシシ

原則7. 古木、希少な動植物の保護

国有林は、沢山の希少な絶滅の危機にある動植物、菌類などに生息地を提供している。そしてそれは環境に配慮した林業によって保持、促進されている。

森林の老齢段階における動植物の生息地を確保するために、森林の選択的な利用によって、規模や配置を考慮し、高齢で大径木のハビタット木や立ち枯れ木や倒木を維持する。大きな洞や巣、繁殖や休憩に使うような個々の木の他に、ハビタット木はグループや小面積で保存し、確実に区別がつくようマーキングし、各々の自然の発達に任せ朽ちていくまで放置する。その際、労働安全や交通安全の観点は配慮をする。

希少な在来樹種は、適した場所で保持し遺伝的なポテンシャルを保護する。

 

原則8. 森林保護区ネットワークの確保

 ある程度の範囲で、その地域の典型的で希少な森林群落を、完全にまたは特別な場合のみ手入れ可能なように保護する。これらの森林面積は自然の森林発達に任せ、老齢段階までなる完全な森林の生活サイクルの空間と、それに付随する生態系を提供する。そしてそれは学術的に貴重な研究対象となる。

自然保護法などの法的な保護意外にも、希少な動植物にとって重要な個別のビオトープを保護する。

 

原則9. 特別な森林の機能の保持

森林は多様な形で、環境や人間に好影響をおよぼす。それは自然の基礎となる水、土、空気、気候を保護、改善し、生息地、保養地、体験地を提供する。基本的に様々な森林の機能は、より林業の施業を近自然的に行わほど向上する。生態系に配慮した造林方法で森林の機能が十分に果たせない場合は、その場所に特化した機能を強化する。

森林の保護機能は、保養機能によって脅かされてはならない。

森林機能の計画の根拠は、国土整備プログラム、建築管理計画、景観計画、ビオトープ図、森林機能図、森林ビオトープ図である。

 

原則10. 林縁の形成と育成

林縁の内側と外側は森林の保護、自然保護、景観の創造そして保養の価値がある。 それだけでなく、土壌保護、気候保護、イミシオン保護、視界からの保護を満たす。

これらの機能を守るために、手入れによって林縁を作っていく。基本的にそれは在来の草、低木、高木によって段階的な構成にする。それらは森林の内側と、外側の開けた環境の境というだけでなく、沢山の動植物の生息地となる。

 

原則11. 生態系に配慮した森林保護

森林のエコシステムは常に、自然の影響にさらされている。その予防措置として、場所に適した、種の多様性がある、構造の豊かな混交林の発達が有効である。それゆえこれまでに書かれた原則は、暴風雨、森林火災、雪害、病虫害などに対する、安定性、抵抗力を高める働きをする。

しかし、森林の総合的な機能を守るための措置が迫られる状況は常にある。その際、生態系に配慮した森林保護は、技術的や科学的な措置より優先される。生態系の外からの素材による防御措置は、林分とその機能の存在にかかわるような場面に限られる。

 

原則12. 生態系に適した野生動物の密度

森林は、在来の野生動物の生息地として存在している。しかし環境に配慮した造林の発達は、高い野生動物の密度によって脅かされる。そのため目標に沿った、継続的な狩猟は重要である。

野生動物の密度は、先駆樹種や主要樹種が柵などの保護措置なしで更新可能で、自然な構成で発達できる程度にする。

 

原則13. 生態系に負担をかけない林業技術

森林の手入れは、自然の合理的な力を優先して行う。目標は、森林の自己発達を利用し、労力の投入を最小限にし、コストを削減する。

林業技術は、土壌や林分そしてその構造や種の多様性を壊さないように利用する。労働安全のために、技術的な進歩は取り入れる。

森林内で面的な走行を行わないよう、恒常的な密な作業道を整備する。

 

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