バーデン=ヴュルテンベルク州はドイツの南西部に位置し、シュヴァルツヴァルト(黒い森)という日本でも有名な山地が存在しています。
バーデン=ヴュルテンベルク州の近自然林業
バーデン=ヴュルテンベルク州では1970年代から近自然的な考えが導入されはじめ、1990年代には州有林において近自然林業の体系的なコンセプトによる森林施業が実践されてきました。
2010年には古木・枯死木コンセプトというプログラムもつくられ、林業における自然保護の面について補強しています。
バーデン=ヴュルテンベルク州が設定する近自然林業に関する項目
・自然の遷移や攪乱を組み込んだ、安定した森林生態系の構築
・地域の樹種を主体とした樹種構成
・複数の樹種の混交した複層林の構築
・天然更新の活用
・自然の遷移プロセスを利用した森林保育
・森林および野生動物を適切に管理するための狩猟
・病害虫に対する生物的・機械的防除の優先、化学薬品使用の回避
・伐採時における土壌や立木の損傷の防止
・故死木の蓄積や森林ビオトープ図を利用した自然・景観保護
近自然林業の影響
2010年にFVA(The Forest Research Institute Baden-Wuerttemberg)が、これまでバーデン=ヴュルテンベルク州で行われてきた近自然林業の影響をまとめています。
1970年代頃には森林面積の70%近くを針葉樹が占めていましたが、その後、本来の優占種であるブナやその他の広葉樹を促進することにより、針葉樹の割合が減り、広葉樹の割合が徐々に増えてきました(図1)。
そして風害や腐りなどの恐れがある、適した環境ではないトウヒの一斉林は樹種転換を行い、森林の安定性は高まりました。
また、天然更新の活用により、植林の面積は減少してきています(図2)。
更新地における、天然更新の割合は1970年代は25%ほどであったのに対し、現在は65%にまで増加しています。
その他、伐採時の樹皮の損傷の割合は未だ高く、森林作業の質の向上が課題とされています。
近年は気候変動の影響もあり、将来的な環境にどのような樹種が適しているのか、さらなる研究が期待されます。
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